キャッシュ・フロー計算書(Cash Flow)の読み方

この記事では、キャッシュ・フロー計算書(CF, Cach Flow)の読み方について解説します。
キャッシュ・フロー計算書は、財務3表の1つで、企業の活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのことです。
企業の活動は、本業の営業活動、投資活動、財務活動が含まれます。
一言で言うと、会社の成績表であり、会社のお金の流れがわかります。
企業の決算を読む上で、欠かせない表の1つとなっています。
#会計クイズ でも、複数企業のキャッシュ・フロー計算書を比較する問題を出題することがあります。
が、そもそもキャッシュ・フロー計算書とは何か?という方も多いかと思います。
今回は、そんなキャッシュ・フロー計算書について、詳しくみていきます。

キャッシュ・フロー計算書を比較する会計クイズ

キャッシュ・フロー計算書を比較する会計クイズは以下の図のような形式で、実在する企業のキャッシュ・フロー計算書を図解し、並べる形で出題します。
これらのキャッシュ・フロー計算書を比較して、ある企業のキャッシュ・フロー計算書がどの選択肢なのかを解答していきます。
以下は株式会社マネーフォワード、武田製薬工業株式会社、いずれかのキャッシュ・フロー計算書です。

キャッシュ・フロー計算書の比較問題

例題となりますが、上の図のキャッシュ・フロー計算書のうち家計簿アプリで有名な株式会社マネーフォワードのキャッシュ・フロー計算書を表しているのはどれでしょう?
※今の時点でこの問題に解答できなくても大丈夫です。
※この記事を読み終わる頃に、この問題を解けるようになっていることを目指しましょう。

キャッシュ・フロー計算書の読み方

それでは、損益計算書をどのように読んでいくのか、まずは大枠から見ていきましょう。
下の図はキャッシュフロー計算書と含まれる項目を図解したものです。

キャッシュ・フロー計算書の実物と図解

左が実際のキャッシュ・フロー計算書(今回の例では、2017年度のソフトバンクのキャッシュ・フロー計算書を使用)であり、右側が図解化したものです。
左側のように実際のキャッシュ・フロー計算書は細かい項目(勘定科目)に分かれています。
会計の実務を担当する場合、これらの細かい項目を覚え、収入や支出がどの項目に該当するのかを仕訳する必要があります。

右側は、勘定科目を大きなカテゴリーで括り、カテゴリーごとに金額の大きさとグラフの高さを対応させた図です。
このように図解化することで、会計に係る内容を感覚的に捉えていきます。
ただ、図解しただけでは各項目が何を表しているかがわかりませんね。
なので、各項目を簡単に見ていきましょう。

キャッシュ・フロー計算書の大枠

キャッシュ・フロー計算書に係る活動は大きく以下の3つに区分することができます。

  • 営業活動:本業の営業活動による現金の増減
  • 投資活動:投資による現金の増減
  • 財務活動:資金調達と返済による現金の増減

企業活動を営業、投資、財務に分け、それぞれの活動によって現金がどのように増減したのかを見ます。
では、これらを詳しく見ていきましょう。

営業キャッシュ・フロー

まずは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」から見ていきます。
企業の営業活動によって流入、流出した現金の動きが記載されます。
例えば、「商品を販売して手に入れた現金」「材料を仕入れるために支払った現金」「広告宣伝費などの販管費の支払の際に流出した現金」などです。
また、営業活動の区分には「税金コストの支払」や「災害に伴う保険金の受取」などの投資活動や財務活動に区分されない項目も記載されます。

営業キャッシュ・フロー

次に、営業活動のキャッシュ・フローの読み方を説明します。営業活動のキャッシュ・フローは3つの区分の中で最も重要です。
本業から得た現金の増減を表しており、営業キャッシュ・フローがプラスなのかマイナスなのかが非常に重要になります。

営業キャッシュ・フローの正負と行動

営業キャッシュ・フローがプラスの場合、本業は順調と言えます。
また、そこで得た資金を投資活動の財源にしたり、株主への利益還元の財源にすることができます。

一方、マイナスになっている場合は、他の活動で補わなければなりません。
また、継続的にマイナスが続くのであれば早急に事業の改善が必要になります。

投資キャッシュ・フロー

次は、「投資活動によるキャッシュ・フロー」について見ていきます。
企業の投資活動によって流入、流出した現金の動きが記載されます。
投資を行い、現金を支払ったのならマイナス、設備や株を売却し現金を受け取ったのならプラスです。

投資キャッシュ・フロー

投資キャッシュ・フローは、マイナスだからダメということはありません。
営業活動や財務活動によって流入した現金を投資して事業拡大を目指した動きを取れているか、が論点になります。
そして、投資活動によるキャッシュ・フロー情報を読み解くことで、企業の経営スタンスを推測することができます。

投資活動の流れ

投資の財源はどこからなのか?投資先はどこなのか?投資する市場はどのステージで、どの程度の投資をおこなっているのか?などです。
例えば、店舗をもつ企業の場合、営業活動で得た資金を成熟市場の設備投資に回す。などです。
企業の例をあげると、ソフトバンクは財務活動によって得た現金で成長市場のベンチャー企業に投資し、サイバーエージェントは営業活動で得た現金を成長市場に位置する新規事業に投資しています。

財務キャッシュ・フロー

最後に、「財務活動によるキャッシュ・フロー」について見ていきます。
財務キャッシュ・フローはシンプルで、資金調達と返済による現金の動きを表しています。
調達したらプラス、返済したらマイナスです。企業が上場し資金調達をした場合、この区分が大きくプラスとなることが多いです。

財務キャッシュ・フロー

以上、キャッシュ・フロー計算書に係る3つの活動について説明してきました。
これらをまとめると以下のようになります。

数字の増減と活動内容

以上のように、キャッシュ・フロー計算書は、本業の営業活動、投資活動、財務活動による現金の流れを表した会社の成績表です。
企業の決算を読む上で、欠かせない表の1つとなっています。
また、上記の活動による現金の流れから企業がどのフェーズにいるか推測することができます。
もちろん、絶対ではないですが、企業を見る上で一つの参考情報として役に立ちます。

キャッシュ・フロー計算書を用いた簡単な財務分析

それでは、具体的にキャッシュ・フロー計算書が取りうるパターンを見てみましょう。
活動が3種類(営業、投資、財務)で、プラスかマイナスのいずれかとなるので、全体のパターン数は8パターンです。
図で見ると、以下のようになります。

3つの活動と数字時の動向パターン

企業を見る場合、各活動のキャッシュ・フローがどのような状態かを把握するように心がけて見てください。
その際、上図のどの型に当てはまるのかを確認することで、どのような状態か推測することができます。

では、具体的にどの型がどういう状態なのかを見ていきましょう。
まずは、「健全型キャッシュ・フロー」です。

健全型キャッシュ・フロー

「健全型キャッシュ・フロー」は企業のあるべき姿の1つです。
本業で資金を獲得し、その資金で新規事業や企業へ投資、借入金の返済を行なっています。
続いて、「積極型キャッシュ・フロー」です。

積極型キャッシュ・フロー

「積極型キャッシュ・フロー」は事業拡大フェーズの企業がとるキャッシュ・フローです。
本業で獲得した資金を投資し、不足する投資資金を借り入れています。
次は、「改善型キャッシュ・フロー」です。

改善型キャッシュ・フロー

「改善型キャッシュ・フロー」は事業を縮小しようとしている企業がとるキャッシュ・フローです。
本業と設備売却で得た資金で借入金の返済を行います。
次は「衰退型キャッシュ・フロー」です。

衰退型キャッシュ・フロー

「衰退型キャッシュ・フロー」は事業が衰退している企業のキャッシュ・フローです。
本業が赤字になっており、設備売却をすることで借入金の返済を進めています。
次に、「勝負型キャッシュ・フロー」です。

勝負型キャッシュ・フロー

「勝負型キャッシュ・フロー」は資金繰りが厳しい企業のキャッシュ・フローです。
本業で資金が流出しているが、借入金を投資に充てている状態です。
最後に、「救済型キャッシュ・フロー」です。

救済型キャッシュ・フロー

「救済型キャッシュ・フロー」は、かなり厳しい状態の企業がとっているキャッシュ・フローです。
本業で資金が流出しており、設備を売却、さらに足りない資金を借入金で補っている状態です。
参考として、以下に2016年度の東芝のキャッシュ・フローを掲載します。

東芝のキャッシュ・フロー

2016年度、東芝は不正会計やのれんの減損が問題となりました。
事業を売却することで大量の資金を確保しています。

以上が簡単な財務分析です。
会計に対する抵抗が下がったのではないでしょうか。

会計クイズの解き方

ということで、最初に見た問題を再度見てみましょう。
冒頭と同じ「キャッシュ・フロー計算書の比較問題」の図が以下にあります。
最初に見た時よりも、少なからず抵抗が薄まったのではないでしょうか。

 キャッシュ・フロー計算書の比較問題

上図の選択肢は株式会マネーフォワード、武田薬品工業株式会社、いずれかのキャッシュ・フロー計算書です。
これらの選択肢から株式会社マネーフォワードのキャッシュ・フロー計算書を当てる会計クイズです。

では、一緒にクイズを解いていってみましょう!
まず最初のステップです!

企業をイメージする

株式会社マネーフォワードがどのような企業であるか、イメージしてみてください。
財務分析を行う上で、企業をイメージするのはとても重要で、会計クイズを解く際も企業のイメージは重要な工程になります。

  • 上場である程度の資金を調達したはず
  • 赤字上場で話題になった
  • SaaSのビジネスモデルだから長期的には安定収益だろう
  • ITビジネスだから、固定資産等への投資は少ないのではないか
  • アプリのCMをよく見る
  • etc...

いくつかイメージがわきましたか?
実際の財務諸表を見る前に、イメージを元に自分の中で財務諸表の形を作ります。

そして、イメージした財務諸表と実際の財務諸表を比べ、差を詰めていくことで分析能力の向上に繋がります。
そのため、このイメージするというフローは絶対に省略してはいけません。

このフローを継続することで、イメージの精度が上がります。
最終的には、企業の所属する業界と展開しているビジネスモデルから財務諸表のカタチを、
また逆に、財務諸表のカタチから所属する業界とビジネスモデルの展開、どのような状態かを精度高く推測できるようになります。

では、マネーフォワードのイメージとキャッシュ・フロー計算書を結びつけていきましょう。

キャッシュ・フロー計算書の項目を比較する

マネーフォワードといえば、2016年に上場したFinTech企業です。
BtoBで会計管理システムを提供し、BtoCで家計簿アプリを提供しています。
「家計簿アプリ」はCMでも見たことがある方が多いと思います。

2016年度の上場によって資金調達をしているので、それがキャッシュ・フローに反映されます。
資金調達に関する情報は「財務キャッシュ・フロー」に反映されましたね。
では、ここで「財務キャッシュ・フロー」を比較してみましょう。

財務キャッシュ・フローの比較

選択肢①、②ともに、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスになっていますね。
ここでは、踏み込んで大きさにも着目してみましょう。
①では財務キャッシュ・フローの4分の1程度の投資ですが、②では財務キャッシュ・フローの倍程度の投資をしています。
上場で得た資金の倍程度の投資を行うか?という点は疑念をもって良いですね。
続いて、「営業キャッシュ・フロー」の比較です。

営業キャッシュ・フローの比較 

営業活動によるキャッシュ・フローは①がマイナスで、②がプラスとなっています。
対極の動きとなっているので、考えやすいですね。

②は事業として、比較的健全なキャッシュ・フローの動きをしているように見えます。
①は事業が上手く回らなくなってきた、もしくは、新しい事業で成長段階のため、利益が出てない可能性があります。

ではここで、キャッシュ・フロー全体を見てみましょう。

成長段階事業と拡大に向けた投資調達

選択肢①の企業は営業活動が安定しておらず、資金が流出しています。
その状態でさらに投資をおこなっています。また、そのために資金調達をしているように見受けられます。
営業活動を安定させるために投資を行っているとも読み取れ、成長段階の事業がとるキャッシュ・フローと同傾向です。

安定事業と拡大に向けた投資調達

一方、選択肢②の企業は比較的健全なキャッシュ・フロー計算書の動きをしているように思えます。
営業活動で安定した現金を確保しつつ、事業の拡大のため投資に回し、営業活動で賄いきれない分を財務活動で調達する。
そのため、本業がある程度形になっている状態で、事業拡大のために大きな投資を行ったように見受けられます。

以上から、正解は①がマネーフォワードでした。
赤字上場ということもあり営業活動はマイナスとなっていますが、まだまだ成長段階のため投資も続けている状態です。
SaaSのビジネスは、月額課金で少しずつ長期間に渡って売上が計上されます。
月額課金に対して顧客獲得に要するコストが大きいため、投資を要する成長率の高いステージでは赤字になりやすいビジネスモデルです。

一方、企業②は医薬品業界の大手企業「武田製薬工業」でした。
この規模の会社は営業活動も安定しており、多額の投資をしても耐えられるだけの財務体質になっています。

※もちろん今回の解説はあくまで一例であり、答えへの辿り方はたくさんあります

以上がキャッシュ・フロー計算書の読み方と、会計クイズの解き方です。
少しでも財務諸表に対するハードルが低くなっていると嬉しいです。

こちらの読み方を参考に、色々な企業の財務諸表を読んだり、 #会計クイズ に参加していただけると幸いです。
日々、財務諸表を読むことで、確実にビジネス基礎力が高まると信じています。
是非、継続的に財務諸表に触れてみてください。

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